出ました、不良率ゼロ%!
SB-DARK転写紙の不良率確認テストを終え、これをご報告する紹介記事【続編2】をまとめましたので掲載します。
本稿に関連する過去に掲載した記事も、ぜひご覧ください!
◆本稿関連記事情報
・19/05/31 UP:濃色生地Tシャツ用転写紙SB-DARKのご案内https://sanryunews.com/2019/05/31/sb_dark_toner_transfer/
・19/08/08 UP:濃色地Tシャツ用転写紙SB DARKの1ご案内【続編1】
https://sanryunews.com/2019/08/08/sb_dark_toner_transfer_sequel1/
SB DARK転写紙は、抜ける転写紙、No-Cut転写紙、縁なし転写紙、カッティング不要転写紙など、さまざまな名称で呼ばれるAB両シートを用いた濃色生地への転写用セルフウィーディング型転写紙です。
これまでご紹介してきたように、その品質と作業性は、各社各様です。しかし、お客様の声を総合すると、品質の他にも重要な三つのポイント、「不良率、作業性、価格」があるようです。今回はその中の不良率について社内確認テストを行いました。
SB-DARK転写紙で作成したTシャツサンプル
※(注
最初にお断りしておきます。ここに発表するデータと作業条件は、あくまでも今回の当社社内のテスト結果に拠るものであり、保証値ではありません。今後変更することもあり得ます。良否判定は、当社社内基準に拠ったものです。難易度は、転写する画像の形状にも影響を受けます。発表データは、皆様が商品を選択される際のご参考に提供するものとご理解ください。
◆難しいのはA3サイズ、画像はベタ
工程の中で各社共通しての最大の難所は、白色接着層をBシートからAシート画像上にしっかりと転移させる工程でしょう。上手く行かないと、Bシート台紙が破れる、白色接着層が画像輪郭で切れずにはみ出してカス部として残る、画像輪郭部に白色接着層が付かない、画像が白色接着層側に移ってしまうなど、様々な問題を引き起こします。ご経験のお客様も多いのではないでしょうか。これらの結果には温度が大きく影響しています。ですから作業がより手間取る大きなサイズ、A4よりはA3サイズの転写の方が難しいのです。
「A4サイズでお試しの上ご注文」と注意書きをしているメーカーサイトがある理由です。
画像は、ベタ画像、極太文字画像が難しく、転写不良が出易いことも確かでしょう。AB両シートを熱プレス機で押し付ければエア溜りが出来易いことは前回の続編1に記しました。又、大きなベタ部は白色接着層の転移面積が大きいので、Bシートの剥離に力が要ります。これが、作業難易度を上げるのです。この力を最小限に抑えるには、白色接着層が柔らかくなる温度範囲で剥離作業をすることが必要になります。また、精細な画像の場合は、接着層のめくれや脱落が起こり易くなります。
◆当社テストは、過酷なA3サイズ、極太文字と精細画像
さて、当社のテストには、難しいA3サイズで、Tシャツ画像としてよくありそうな極太文字画像と細い線のある精細な画像の二種を試しました。当社は、そんな会社です。マニアックで、難しいものに好んで挑戦します。取り組んだ分野では、日本一、世界一を目指します。ですから、世界特許まで取得します。
話がそれますが、当社開発の食品用プリンタは海外輸出まではじめています。そんな当社ですから、目指したのは不良率ゼロです。ただし覚悟として、他社と同様な手作業で不良率ゼロを実現できなければ、何か補助治具を考案するという考えは持っていました。この補助治具無しに、不良率ゼロにはたどり着いたのですが、末尾にこの考案した補助治具もご紹介します。
【使用した画像と作業条件】
当社テストは、下記の条件で行いました。
◇プリンタ:白トナー搭載プリンタ・型式 Pro8432WT(CMY+Wの4色機)
◇転写紙:SB DARK転写紙(特許申請済) サイズA3
◇プレス機:Insta社手動機、ShockLine社エア駆動機
◇転写条件:テーブルプレヒート10秒 AB両シート圧着・剥離
●Insta機使用 → 170℃×30秒(女子A)
●ShockLine機使用 → 170℃×20秒(女子B)
◇生地転写:150℃×2秒
◇再プレス:150℃×20秒
◇作業者:当社市場開発部 女子A10枚連続作業、女子B10枚連続作業
◇画像:画像①極太文字、及び画像②精細イラスト
画像①極太文字
画像②精細イラスト
【作業詳細】
AB両シートの熱圧着では、画像が長方形の大きな完全ベタではなかったので、ラミネータ―は使用しませんでした。他社の多くが熱圧着を120℃~155℃程度に設定していますが、これを170℃と高温に設定しました。理由は作業時間を短くしたかったからです。170℃程度の圧着なら、白色接着層がAシートの非画像面に接着することはないだろうという予測で、これはその通りでした。温度と時間を変えた作業条件もあり得ます。A4サイズなら、155℃程度でも十分でしょう。
なお、生地へのプレスの際に170℃という高温を避けたいなら、設定温度を150℃に変えても構いません。当社取り扱いのシリコンスポンジシートを被せれば20℃程度下がるので、AB両シート熱圧着の設定温度170℃のまま生地プレス作業を継続も出来ます。
AB両シートの剥離はホットピールです。プラテンを横へ移動した後、Bシートの縁を捲りあげて、Aシートの先端はテーブルからわずかに引き下ろして、作業者のお腹とテーブル手前側の間に挟みます。Aシートを動かないよう押さえたら、Bシートを両手で持って転写機奥側に向かって引き剥がして行きます。水平のテーブルに対してBシートを引き剥がす角度は0度が推奨です。これは各社共通のようです。角度が付くと、Aシートがテーブルから浮いて温度が下がってしまい、転写不良が多発します。テーブル奥側最後の方では移動後のプラテンに触って火傷しないよう注意は要ります。
A・Bシートの剥離作業(作業者からテーブルを見下ろした写真)
◆不良率ゼロ%をPRするのではありません
もちろん、不良率ゼロ%で商品を販売するメーカーは無いでしょう。これは当社も同じです。
今回お伝えしたいのは、難しいと言われているA3サイズの連続転写に挑戦して、二人(市場開発部ベテラン女子社員、入社後半年の新人女子社員)が同じように10枚連続転写を失敗無しで終えられたことです。A3サイズ太文字転写、精細画像転写も恐れるものではなさそうです。A4サイズの転写や、画像のまばらなA3サイズ転写などの作業は非常に容易なものになるだろうということも、ここから想像できるのはないでしょうか。
◆秘密兵器のご紹介
最後は秘密兵器の補助治具についてです。写真は、Insta社プレス機に取り付けたものです。
Aシートをお腹で挟むのが難しかったり、テーブル奥までBシートを捲るのが難しいという場合は、このようなものを用意して確実にAシートをテーブル側に押し付け、Bシートを手前側に引っ張ろうと考えていました。このような冶具があれば体の小さなひ弱な作業者でも容易に作業できるはずです。上記のように、お腹を使った手作業(腹作業?)で不良率ゼロを達成してしまったので詳細の紹介は省きますが、これはなかなかの優れものです。この治具にご興味の方はお問い合わせ下さい。
◆最後に
ここで、プレス機の温度について注意を記します。私どもが使用した二社(Insta社、ShockLine)のプレス機で170℃と同じ温度に設定しても、実際温度はShockLine社プレス機の方が5℃ほど低いようです。このように、各社の温度表示が必ずしも実際のプラテン温度と一致しているとは言えませんので、貴社の所有機での最適転写条件は、貴社にて必要なテストを行って確認して下さい。
では、皆様のSB-DARK転写紙ご採用の時にも期待通りの成果が出ますよう願いながら本稿を終了させていただきます。